静夜・雄夜・スイ

TAKIちゃんから頂きました。
私生活でばたばたしている私に、励ましの意味をこめて描いてくださったんですよう。
嬉しくって思わず、二ヶ月以上も秘匿してしまいました。
静夜の笑顔がたまらないのです! で、雄夜の優しそうな表情がなんとも。
あらためて思ったんですが、この双子って、もしかして美形双子だったんですね?
スイに会いに行く、ちょっと前をイメージして短文を書いてみました。
TAKIちゃんが気に入ってくださると良いのですけれど! 素敵イラスト、本当にありがとうございましたー(嬉)

「静夜」
 低い声にささやかれて、目を見張る。手にしていた本をサイドテーブルに置いて、ゆっくりと振り向けば、ドアノブに手をかけた状態で双子の片割れが立っていた。
「雄夜?」
 首を軽く、かしげる。
 雄夜は基本的に朝に弱く、静夜は朝に強い。早朝と深夜は、それぞれの時間のようになっているのが、普段の生活の形だった。
 ちらりと時計を見やれば、まだ朝の五時半。いつもならば、まだ夢の中のはず。
「なにかあったの?」
 立ち上がって、片割れの顔を見上げる。雄夜はなぜか子供のように笑った。
「スイが」
「え?」
 言葉少ない片割れのつぶやきに、首をかしげる暇もなく、手を引かれた。
「ちょ、ちょっと!」
「スイが呼んでいたんだ」
「呼んだ? 夢で?」
「ああ。もう少ししたら、空がきれいだって」
「そう」
 引きずられる形だった体制を立て直す。今度は素直に従って、静夜は雄夜と共に外に出た。
 しん、とした朝は、空気をそのまま清浄に切り固めたかのようで、静夜は好きだった。
 この時間は、決まった人が外にいる。ランニングをする人、犬の散歩をしている人、のんびりと座る老夫婦。週に二・三度は早朝に散歩する静夜もその一員で、時々目を細めて挨拶をしてくる人々がいた。
「朝の静夜は人気者だな」
「なにそれ。朝だけ?」
「いや、ほかも、かな」
 小さな頃、雄夜は静夜の腕を引いて歩く癖があった。流石に今は腕をつかむことはしないが、前を歩こうとする癖は残っている。
 ――まるで力関係に差をつけられるようで、正直静夜は面白くない。
「ねえ」
 さりげなく、けれど意図的に。早く歩いて、距離を詰めた。
 横に並んだ片割れを、雄夜の切れ長のまなざしが見やる。
「雄夜だって、結構人気者だよ?」
「そうか?」
「そうだよ。雄夜はさ、僕に桜のことをいうけれど。雄夜のことを……ま、いっか」
「んん?」
「普通気づくなら、気づいてやるなよ」
 笑い出して、静夜は唐突に走り出した。あわてて雄夜も走り出す。
 視界の先に、スイの住まう老夫妻の家が見える。
 玄関の柵に体を擦り付けるようにして、尻尾を振っている姿がみえた。
「ほら」
 雄夜が笑う。
 静夜も答えて笑った。
「待ってたね、スイ」