智帆・静夜・雄夜

の速音さんから頂きました。
部活な三人を描いてくださいました〜。やーん、可愛いっ!(>_<)
なにげにポケットにいる智帆の最愛の人の存在に、かなりニマリでしたよう。
確かに智帆ならどこにでも連れて行ってしまうかもしれない、なんて思ってみたり。
剣道部・弓道部の二人は、互いの練習にも付き合ったりするので、実は両方出来たりします。第五話あたりで、この変が役に立つことがある、かも、です。
三話ネタバレ入ってます。

「寒そうだよな。……困った」
 ぽつりと呟いて、秦智帆は大きく息をついた。
 外をみやれば木枯らしが吹いている。ひょう、ひょう、と吹く風の音はかなりの冷たさを伴っていそうだった。
 智帆は冬には強い。友人の大江静夜もそうだったので、彼の机に寄りかかるようにして立っていた静夜は首をかしげた。
「なんで?」
 きょとんとした顔で見つめられて、智帆は軽く肩をすくめる。
「寒くなるとさ、緑子さん冬眠するんだよね。冬眠させたらダメだっていう奴もいるし、自然のままが一番だろっていう奴もいるし。毎年悩むんだよなぁ」
「ああ、冬眠問題」
「人間も冬眠が可能ならな……」
 智帆の隣の席に勝手に座って、机に突っ伏していた雄夜がのそりと顔をあげる。
 智帆と静夜は互いを見やってから、半眼になって冷たい眼差しを向けた。
「冬の寒さくらい耐えれないとね」
「俺らに、夏に弱いなんて情けないって説教したのは、雄夜だしな」
「……。うるさい」
 ぼそりと雄夜が呟く。
 からりと笑うと、そのまま二人は立ち上がった。
「さて、部活いくかな」
 白衣のはいった鞄を持ち上げる。そうだねと静夜も立ち上がり、雄夜の腕をひっぱった。
「ほら、雄夜も行こう」
「冬の道場は……」
「はいはい。寒いんだよね。僕もねぇ、夏の弓道場は暑くって苦労したんだよね。雄夜に無理矢理ひっぱられて、放り込まれて辛かったなぁ」
「――」
 にっこりと微笑まれて、雄夜は無言になる。実は雄夜は、兄弟喧嘩で静夜と勝敗がついたことが無い。乱闘になったとしてもだ。小柄の上に華奢なので力はないが、それを補って余りあるスピードを静夜は持っている。一見してもろそうなものを苦手として生きてきた雄夜が、静夜を避けずにすんだのはそのためだった。
 のそりと立ち上がる。
 ロッカーのコートを取り出し、マフラーを取り出し、手袋を取り出したところで、籐の籠を見つけた。
「智帆」
 ぐるりと振り向く。部室ではなく、教室で白衣を着てしまった智帆は振り向いて「ああ」といった。
「緑子さんをみたいって部活の奴がいうもんでさ。つれてきたんだ」
 ゆうゆうと泳いでいるカメの入った籐の籠の中には、智帆が勝手に作ったと思われる、ヒーター機能つきの水槽がはめ込まれている。
 カメの緑子さんはゆうゆうと泳いでいたが、智帆の声に反応を示し、ひょいっと体を持ち上げた。
「カメって、なつくんだな」
 しみじみと雄夜が言うと、智帆は呆れた顔になる。
「そりゃそうだろ。それともなんだ、緑子さんはお前の親友のスイとちがって馬鹿だとでもいいたいのな?」
「そんなこと、言ってない」
 むうと口を引き結ぶ。
 出入り口に立っていた静夜が、「早くくれば?」とさらりと笑った。
 

 部活が終わったら、当たり前のように待ち合わせをする。
 以前はバラバラに帰ることが多かったのだが、最近は合流して帰ることが多い。全員でそのまま近所に買い物に行って、簡単な夕飯の材料を安く買って、三人で夕飯を囲むのだ。
 料理をするのは静夜だが、雄夜は部屋の掃除をし、智帆はとりあえず料理の手伝いをしていた。
「最近、なんか外で食べると味が濃い気がする。舌がおかしくなったかな」
 ブリの照り焼きを口に運んで、ふっと智帆が首をかしげる。静夜は目をまるくして、くすくすと笑い出した。
「それって、舌が変になったんじゃなくってさ」
「智帆が、うちで食べる味を基準にするようになったんだろ」
 大江家の一員なワケだ、と双子は智帆の両肩をそれぞれ叩いた。