Zガンダム カミーユとフォウ
Zガンダムのカミーユとフォウがみたい〜〜と日記で騒いでいたら、私を励ましてやろう!ということで、やまねさんが書いてくださったんです。
とっても可愛い二人(><) しかもデート中。嬉しくて、嬉しくて、ほっぺた緩みまくりなのです。ありがとう〜。
風がゆっくりと二人の頬の上を滑っていく。春の日差しは優しく、少ない休みの時間を暖かく見守ってくれているかのようだった。
ふわり、とフォウが手を広げた。
隣を歩いていたカミーユが、誘われるように彼女に視線を向ける。無邪気にフォウは笑うと、手で風を抱きしめるようにして走り出した。
「カミーユ、見てっ」
軽やかに駈けながら、少し振り向いてフォウは笑う。
「何を?」
カミーユは気難しい少年だと周囲に思われている。実際、彼は感受性が強すぎるためなのか、刺々しい印象を与えるのも事実だった。
だから、今の彼をロンドベルのクルーが目撃したら、ひどく驚くのだろう。
子供のように笑うフォウの前で、彼も少年らしい素直な表情を浮かべている。
ん、とカミーユが首を傾げる。彼が気にするので口にはしないが、フォウはカミーユが時折見せる幼い仕草がとても気に入っていた。
にっこりと笑い、まだ迷っているカミーユを置いて再び走り出す。
先ほどとは違って、かなりの速度を出していた。フォウは人工的に人を強化する実験を施されている。おかげで何度も命の危機に晒されてきたが、その度にカミーユが彼女を救って――今に至る。
そんな彼女は、走るのもかなり速い。
追いかけねば姿が見えなくなるので、今度は迷わずにカミーユも走り出した。
「フォウっ」
少年らしい、透明度の高い声がフォウの耳朶を打つ。
そうやって彼が自分の名を呼ぶ声を聞くのも、フォウは大好きだった。
――四番目に施設に入れられた、ナンバー・フォー。
彼女を識別する記号でしかなかったものを、彼女が自分の名前だと愛しく思えるのようになったのも、カミーユが”フォウ”と自分を呼ぶからだ。
そして名前を嫌っていた彼も。自分とであって、名前を――好きになったという。
腕を、追いついてきたカミーユの手に掴まれた。
そのまま強く引き寄せられる。抵抗するつもりなど全くないので、そのまま引かれる力に身を任せて、フォウは少年の腕の中に飛び込んだ。
少しだけ、息が上がる。
彼の心音が聞こえてくるのが嬉しくて、フォウはくすくすと笑った。
「何がおかしいの?」
不思議そうな少年の声。
「カミーユがいるのが嬉しいの。だから笑っているの」
「それだけ?」
「それだけよ。だって、それだけの事がこんなにも嬉しいから」
手を広げて、抱きしめてくる少年の背を抱きしめ返した。
愛しい人が側に居る。――それがどれほど貴重で、大切なものであるのかを、命を弄ばれて生きてきたフォウは知っている。人の魂の悲しみを感じてしまう、カミーユもそれは同じだ。
「そうだね。いつもいつも、フォウばっかり苦しい目にあって。俺がちゃんと守っていれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに」
「カミーユのせいじゃないわ。それに助けてくれたでしょう?」
ね、と上目遣いで少年を見上げる。
癇の強さを伺わせる表情で、すこし、カミーユは眉をひそめた。
「でもさ、いつも成功するっていう保証はないだろ?」
「うん。そうね」
――強化人間。
その事実が、いつも二人の間に重く圧し掛かってくる。
「まあ、これから先なにがあっても、俺はあきらめないけどさ」
「なにを?」
「フォウをちゃんと守ること」
生真面目な顔で少年が言う。
嬉しくて、けれど気恥ずかしくなって。フォウが笑うと、笑うなよ、と拗ねた声を少年があげた。
「仕方ないわ、だって嬉しいんだから」
嬉しかったら笑うの、とフォウは言葉を続ける。
少年は困った顔をしてから。同じように、ふわりと、笑った。