-- 日向でkiss・kiss・kiss --


 よく晴れたの昼下がり、カチェイとアトゥールは木陰で密談中だった。
「やっぱり、こっちの方がアティーファにはいいって…」
「う〜ん、そうしようか。じゃあ、リーレンはどうする?」
「リーレンは…このパターンでいく方がいいんじゃないか?」
「そうだな。それとこっちもいれておこう。お姫さまを守るためにもこれぐらいやってもらいたいしな」
「そうだな。がんがん鍛えてやろう」
 アティーファとリーレンが勉強中に、二人は次へのメニューを考えていた。
 二人が色々考えている所へ、忍び足でやってくる者がいた。
 「ふぅ〜」と顔を上げたカチェイは、アトゥールの背後に忍んできたアティーファに気づいた。
「あっ!」
「えっ!」
 その声にアトゥールが顔を上げる。と、その目にカチェイの背後にそっと立っていたリーレンに気づく。
 年長者二人の背後から、年少者二人が襲いかかる。
「わぁ〜!!!!」
 声と共に背中を押されて、年長者二人は前のめりになり、そして、怖いことになっていた。
 固まってしまった年長者に年少者の二人はちょっと慌てて、年長者を覗き込んだ。
 カチェイとアトゥールは額を打ちつけ、その反動で唇同士がぶつかりあっていた。いわゆる、キスをしてしまっていた。
「あっ!?」
 アティーファは一瞬困った顔をしたが、次の瞬間楽しそうに走り回っていた。
 リーレンは一瞬にして、顔を青ざめ、逃げ腰になる。
 年長者二人はゆっくりとお互いから離れ、年少者二人をねめつけた。
「「アティーファ! リーレン!」」
 二人の声が重なる。
 逃げ腰のリーレンが先に二人に捕まり、両脇から頬にキスをされる。
「!!!!」
 声にならない悲鳴を上げ、リーレンは硬直する。
「わぁ〜!!! リーレン、いいんだ」
 アティーファののんきな声が、リーレンの硬直をとく。
 ぐったりと腰の抜けたリーレンを尻目に、アティーファはカチェイとアトゥールに「私も、私も」と催促する。
 カチェイとアトゥールはリーレンの時は怖い顔をしていたが、アティーファにはにこやかにキスをした。
 しかし、注意を施すことは忘れない。
「背後から忍んで、人を驚かさないこと。いいね」
「は〜い!」
 元気に返事をして、リーレンを呼ぶ。
「カチェイ、腰を屈めて。リーレン、反対側に。アトゥールはちょっと待っててね」
 三人にお願いをすると、アティーファはリーレンに一緒にだよと言って、カチェイの頬にキスをした。
 リーレンもアティーファに言われたので、こわごわキスをした。
 カチェイは驚いたけど、嬉しそうに笑顔を見せた。
 アトゥールにも屈んでもらって、両脇の頬にキスをした。
 お礼を述べるアトゥールは、先程の怖い顔とは打って変わってにこやかに微笑んだ。
 そして、年長者二人は顔を見合わせて、首を竦めた。
「アティーファにはかなわないね」
「本当に…」


 フォイスは賑やか声がする庭にやってきた。
 じゃれ合っている四人に、いつもの風景を見る。
「あっ、父上!!!」
 アティーファが気がついて、駆け寄ってくる。
「父上も腰を屈めて!!」
 そして、リーレンを呼ぶ。
 リーレンは「えぇ!!」とビックリしながらも、そばにやってきた。
「早く、早く!!! いい?」
「はっ、はい」
 フォイスは何が始まったのか、ワクワクしていた。自分の娘がかわいいのはもちろんだが、リーレンやカチェイ、アトゥールも彼にはかわいい子供なのだ。
 両頬に暖かいものが触れる。
 両脇の二人を見ると、アティーファは喜んでいるし、リーレンは真っ赤になって俯いている。
 いつもなら自分一人だけでキスをくれるアティーファに、フォイスが首を傾げる。
 そして、年長者が止めるのにも関わらず、アティーファは父に説明する。
「楽しいでしょ」
 ねぇとリーレンに同意を求める。リーレンは困ったように頷いた。
「あっ、リーレンにしてない」
 アティーファは慌てて、リーレンの頬にキスをして、自分の頬を傾ける。
「えっ、あっ、アティーファ…」
 何度してもバクバクの心臓がリーレンの身体をぎこちなく動かす。ようやくキスをすると、リーレンはもう身体中真っ赤である。
 フォイスはアティーファを抱き締めて、頬にキスをした。
「本当に楽しそうだね。私も皆にしたくなったよ」
 驚いて固まったリーレンも抱き締められ、キスを受けた。
 そして、フォイスは年長者に目を向ける。
「へっ、陛下。俺たちはいいですから…」
「そのお気持ちだけで…」
 逃げ腰になる二人に追い討ちをかけるように、アティーファが二人の回りで嬉しそうに笑っている。
「父上、素敵だ。カチェイとアトゥールにもやってやって」
「もちろんだ。さぁ〜、二人共…」
 大きく腕を広げるフォイスは、楽しくてしょうがないと笑みが止まらない。
 カチェイとアトゥールは逃げたいけど逃げられない気持ちに、動きが止まる。
 フォイスはまずカチェイを抱き締め、両頬に一つずつキスを落とす。そして、アトゥールにも同じようにして、二人が固まっているのを、また楽しそうに見ている。
「アティーファ、これは楽しいね。ときどきしようかな」
「わ〜い。私も」
 固まった三人を尻目に、無敵の親子はこれからの楽しいことを笑い合う。
 日向の光にキラキラ輝く親子は、固まった三人には眩しすぎるようだ。
ちゃんちゃん(^^)

[ 夜天光 ]の天さんから頂いたSS.
なんとも仲良さそうな光景が微笑ましくて(><)
フォイスとアティーファの親子って最強なのね、と読みながら思っちゃいました。
そして多分、あの後カチェイとアトゥールの間には血の雨が降ったのだろうか、、とか(笑)
天さん、本当にありがとうございましたー。挿絵、勝手に付けちゃってごめんなさい!