エアとティフィ




そして全てが――――天に帰る。

「ティフィ、わかるかい。」
そよぐ柔らかい風に紛れる少年の声。
彼女の名は自分を苦しめ、同時に安らげる呪いのようで。
それは大切に、少年は発音する。

―――エア―――

見上げた空は、それは美しい快晴で。
双眸どころか、胸すらも痛みに苛まれるようだ。


―――そして全てが天に帰る。―――

たしか、彼女が語った言葉だ。
全ての生き物は最後は天に帰り、再び祝福を受けるのだと。
祝福の鐘の神の福音。
しかし、空を見上げてみるけれど、そこにあるのはさまよう雲ばかりで。
「僕には見えないのかも知れないね。」
皮肉気な口調に、幾分かの寂しさをのせて少年は呟く。
晴渡る空が美しくて、見上げる視界に微かに入る自分の髪を
少年は持て余すように、指先でひっぱった。
この髪も、この瞳も。
彼女の愛した蒼穹の空と同じ青なのに。
どうして、自分とそれとはこれほどにも離れているのか。
「・・・・・僕も帰れるのかな。」
呟かれた言葉は、祈りにも似た思い。

―――――もし離れ離れになっても。また、この空で会おう――――

約束された地はあまりにも尊く高すぎて、
祝福されぬ存在だから、天には上れないかも知れないけれど。
「それでも・・・・・ここから、君を見ていることはできるね。」
この大地の上から、それでも空を仰ぎ見ることは自由
だから――――――愛しい君を、ここから見守っていよう。
ともに共有することのできる、この蒼穹の空の下で。
少年は天を仰いで、まるで空を掴むかのように腕を広げ、
空に向かって微笑みかける。
「君も僕も、天を見る。そして・・・」
空を介して繋がる思い。
それだけを信じて。
少年は満足そうに、天に向かってもう一度微笑むと
再び振りかえることなく、静かな森の中へと姿を消した。

全ての思いは、天に帰る。


FREAKSの横道歩ちゃんから頂いたアティーファとエアルローダ。
絵と、イメージの文章もつけてくださったの(><)
あまりの嬉しさに、何ヶ月間も秘匿して一人で楽しんでいました。なんて罰当たりな私!(ぐはっ)
本当に切ないほどに悲しくて、でも幸せな二人をありがとう!!