エアルローダ/アティーファ/リーレン/カチェイ/アトゥール





miracle  punchの藤城南風見ちゃんから頂いたCG。
小説連合の殿堂入り(当時100票基準)のお祝いに頂きました。
画像を開いた瞬間に、エアルローダに釘付けになってしまいました(><)
勿論、アティーファもリーレンもニ公子も素敵なんですけれども、引きつけられたのはエアルローダだったんです(><)
こういう眼差しの雰囲気で書いてもらえるなんて、本当に嬉しくて。しかもエアルローダを書いてもらったのは初めてだったので、本当に幸せで。南風見ちゃん、本当にありがとう!!これからもがんばって、暁、書きます(><)


イメージ短編小説
―― 夜明け前

 見上げれば月。
 暗闇の中、晧晧とした光を大地に差し伸べる、その光。
「……月に照らし出されれば」
 どのような状況でも、多少は美しく見えるかもしれないと、言葉を続けた。唇の端だけを器用に持ち上げるようにして。どこか歪に笑いながら。
 指を持ちあげれば、即座に燐光が集まり、二つ―― 月が生まれたかのようだった。
「君には、月よりも太陽が似合うのだろうけれど」
 腹部に両手で抱えるようにして、今度は背を追って笑い出した。
「楽しいね。うん、そうだ。多分これは楽しいことなんだ」
 ゆるやかに。少年は闇に同化した。



―― 照らし出される暗雲と
「皇女? どうされました?」
 突然に足を止めた少女に気づいて、彼は足を止める。
 黒絹のような彼の髪は風に揺れた後に、瞼の上にと戻った。
「いや…なにか、人の笑い声を聞いたような気がしたんだ」
 首を傾げるようにしながら、心配そうな様子を見せる彼に、彼女は視線を戻した。
「笑い声、ですか?」
 私には特に聞こえませんでしたけれど? と、彼が答える。
「そうだな。実際、誰もいなかった」
 肯くと、先ほどまでしていたように歩き出す。
 けれど違和感を拭えないのか、日常を無理矢理取り戻そうとするように、彼女は彼を忙しく見上げた。
「リーレン、その本、難しいのか?」
「はい? ああ、これですか? まあ、私にとってはそれなりに…」
「ふーん。でも、充分難しそうに見えるけれどな。リーレン、アトゥールが読んでるのと難易度を比べちゃ駄目だぞ? あっちの場合は、読める方が希なのだから」
「それは…たしかにそうかもしれませんね」
「だろう? リーレンは、時々必要以上に自分自身の能力を貶めることがあるから、それは気を付けた方がいいと思うんだ」
 言いながら目を細め、軽やかに笑った。
 ひたり、と。
 闇の中で微笑んでいる。何かとは完全に性質の異なる、笑み。
「え?」
 目を見張り、今度は彼が振り向いた。
 何かが笑っている。誰かが。確かに。笑っている?
「皇女……」
「………なんだろうな」
 分からない。
 二人、前方を見詰める。髪を、そよがせて行く風にも気づかずに。



―― 真昼の月の元
「エアルローダっ!」
 干上がった喉を酷使して、叫ぶ。
「その程度の怒りで、僕を凌駕できるわけがない!」
 叫び声に返るのは、同じ叫び声。
 少年と少女が戦いを続ける。剣と剣、魔力と抗魔力が衝突する。
 きらめくように、滴が空中を舞う。
 汗か? それとも―― 止められない、涙なのか。
「アティーファ。殺してあげるよ。それが嫌なら、僕を殺してみせなよっ!」
 また、滴が空中を舞った。



―― 訪れる激戦
「分からない。誰が望んでこんな事態になるのか」
 珍しく疲れたように呟く親友に、鋼色の青年は肩を竦める。
「俺にも分からないな。まあ、望んだ事態が現実に発生するのも、恐いもんかもしれないけどな」
「―― 確かに」
 ふと笑んで、柔らかな風貌の青年は青い細剣を握り直した。
「まだ、私たちが退場するのは早いのだろう?」
「そうそう。なにせ俺らがいなかったら、悲しむ奴等もいるからな」
「誰だよ、それは。カチェイ」
「さあ。ま、女官達とかか?」
「見物人なんて、いないと思うよ。多分ね」
 ―― 目撃するのは当事者のみ。
「ああ……一応、死者っていう見物人はいるかな」
 面白くもなさそうに言いきって、彼は柔らかな色彩の髪を青空に揺らせて、振り向いた。
 闇が笑い、光が生まれ、暁と夜の帳が相互する。
 決着を求めるのか、はたまた決着のない今の持続を望むのか。
「悪趣味なんだよ。全てがね」
「俺らがその趣味に付き合ってやる必要は、ないだろうさ。付き合ったら、こっちまでが悪趣味だ」
「確かに」
 笑って、抜き身の剣をぶら下げたまま、歩き出す。
 



 ―― 時の彼方での交差
「ねぇ、私ね、好きな人が出来たの」
「そう。良かったわね」
「私、ここから出て行くかもしれない」
「そうね。それで幸せになれるなら。それでもいいかもしれない」
「幸せになれる?」
「努力すれば。現実をみれば。きっと、なれるわ。ルリカ」
「リルカは? 幸せになれる?」
「私は今、もうしあわせよ」
「そうね」
「ええ」
 同じ顔の娘。同じ声の娘。同じ魂の形を持つ二人。
 すべての始まり。
「フォイス、お前どうするんだ?」
「どうするんだ、などとまともな言葉を口に出来るとは知らなかったな、ロキシィ」
「くだらない返事だな。もうちっと、ひねれないか?」
「お前の注文に付き合っていたら、日が暮れるよ。さて、どうするかな。私としては、連れ帰るつもりだが」
「一波乱ある、ってとこだろうよ。ま、いいか。楽しそうだ。暴れるのも悪くない」
 同じ顔の娘が笑いあう背後で。青年は二人会話する。
 過去の話。過去の月が見つめた真実。
 そこに―― 始まりが、ひそんでいる。


―― そして刻み始める時間 ――
「ザノスヴィア王国の一の姫……」
 マルチナはゆうるりと顔を上げる。
 幼馴染の心配をよそに、光の元、笑っていた少女が謁見室へと歩んでいった。
 飛び込んでくる猛禽。
 怒りか、絶望か、それとも悲しみか。いずれ分からぬ感情に、身を震わせるレキス公妃が叫ぶ。
 
 
「全てを、始めようよ」
 姿を現して。
 エアルローダが笑った。