時が凍結する夜に
…夜「少女」



 空漠としたというよりも、灰色がかっていた天空が、耳障りなざわめきと共に蠢き、不意に二つに割れた。魂を屠る死神の鎌が、ついに地上に降臨したかのような、恐ろしいからこそ凄絶なまでに美しい光景。
 大気圏さえも超えて舞い下りるは赤い閃光。
 全てを消滅させ、終結へと誘う圧倒的な力。ともすれば、自らそれに身を委ねたくなるほどの蠱惑。
 なぜかそれを知っている。
 閃光に触れれば命が終わるのだと。
 恐怖も、不安も、抱く希望も絶望も全てが消える。
 足を、一歩、踏み出してみる。
 閃光舞い降りる天空の元へと。
 音もなく感情もなく、死を受け入れようと進む人々と、同じ場所へと…。


 と。声。
「――――っ!?」
 暖かい……誰かの…。


 はっと目を見開き、現実を把握して、少女は初めて呼吸を自己の意志によって止めていた事を知った。喉が溢れるような悲鳴を上げており、酸素を求めてくる身体の欲求の激しさに気道がむせる。
 身体を捩りながら咳込み、その細い両手で白い喉元を押さえた。
 大丈夫。大丈夫。大丈夫……。
 そんな言葉を何度も自分自身に繰り返しながら、涙を浮かべてしまうほどの苦しさに耐える。一分か、二分か。正確な時の流れなどは分からないが、そうしているうちに、酸素欠乏による苦しみは去った。少女はその身体の反応を、まるで他人事のように不思議だなと思う。
 人は、人の体は、たとえ明日死ぬ命であったとしても、今日の死から逃げようとこんなにも必死になる。
 種の繁栄の為か、元々人間という存在が命に執着する性質であるからなのか?
 少女はゆっくりと喉元を押さえていた手を放し、喉を潤すものを探した。生憎、常ならば水を入れている水差しは今日に限って空で、小さく舌うちをする。
 これでは外に取りに行かなくてはならない。
 苛々したように髪をかき上げてから、少女は一度瞼を閉じ、深呼吸を二回程した。動揺を色濃く宿していた表情が、次第に落ち着いたものへと変わっていく。
 忘れろ。今見たものなど、忘れてしまえ。
 目を閉じて、自分自身にそう命令を繰り返す。
 息を止めてしまう程に恐ろしかった夢。もしかしたら、夢などではなく、明日にでも起きるかもしれない破壊の日への、どうしようもない恐怖。
 審判の日は明日。
 ゾハルを滅する事が出来なければ、終わる。
 終わるのだ。全てが。終結し、白濁し浄化されて消えてゆく。夢と同じように、音もなく、存在は消えていってしまうのか?
 唐突に、手に何かの感触がした。
 ひどくそれが不思議で、少女は視線を下げる。
 何も守る事など出来ないちっぽけな自分の手の甲で、それはぷっくりと膨れ上がって存在を見せ付けていた。透明なモノ。モノ。液体――涙?
 やっとの事で得た正確な名詞に、少女は苦笑する。
「やだな。ボク、なに、泣いてるんだろう?」
 初めて声を出して、ぎゅっと、衣服の構成する布を握り締めた。最初は一つでしかなかった涙が、ぽろぽろと布の上を一瞬転がり、すぐに小さな染みを造る。
「恐いの? ボク、恐いのかな? 何が? 死ぬのが?人類が滅んでしまうのがっ?」
 段々と怒ったような声になって、少女は泣いた。
 深々と降りる闇の中。
 常に強くあろうと決めていた少女が、泣いた。



夜「少年」



 瞼を閉じていただけだった。
 世界の壊滅によって、生活をさせるための動力すら中々手に入らぬ現状の為に、非常灯も消されている室内は、今、暗闇という名の狂気をはらんでいる。
 眠れる筈はない。精神は異様な高揚に囚われており、休まねばならぬという現実を理性が把握してもなお、眠りという安らぎは訪れなかった。
 明日。神という存在と一つとなるための力を宿す永久機関ゾハルを滅する事が出来なければ、世界にはこの世が誕生して以来決して有り得るはずのなかった完全な平等が――全ての消滅が待っているのだ。
 気負いは、ない。少なくとも少年はそう思っていた。
 心は湖畔の水面のように静かだとも。
 だから今は、何もなかった。守らなくてはならなかった国のこと、国民の事、王としての自分。まるで甘い遅効性の毒のように、ゆっくりと自我を支配し縛っていた現実すらも、今は遠い。
 明日の戦いに勝利を収めねば、そんな事は意味をなさないのだ。王としてではなく、単なる人間の一人として、戦う。
 自分が生き残りたいから。
 明日も、明後日も、昇る朝日を見たいから。
「……誰かまだ、起きてっかな」
 眠れぬ状態に飽きて、少年は立ち上がろうとした。ゆっくりと、ごく自然に行われたように見える動きだったが、どこか違和感がある。
 まるで嘘つきの名人が、嘘をついている虚構と現実との区別が付かなくなってしまったかのような、そんな違和感。
 少年はそのまま足をベッドから下ろし、両足に体重を乗せた。が、いきなり身体がぐらりと傾ぐ。光を宿さぬ瞳、全てを見定める瞳、双方とが大きく見開かれ、少年は慌ててベッドサイドに手を付いて己を支えた。
「な、なんだ?」
 心底バランスを崩した理由が分からないと思っているような、困惑の声。
 なのに、少年は足元に視線をやろうとしなかった。
 自覚の伴なわぬ崩れならば、原因は足元にあると普通思うだろう。けれど少年は下を見なかった。
 本当は分かっていたのかもしれない。
 認めたくないだけで、分かっていたのかもしれない。
 失敗すれば、本当に後はないのだ。
 それが恐ろしくないわけがない。けれど、認めたくなくて、怯えを自覚したくなくて、涙は耐えつづけた。けれど変わりに、身体が泣いていた。手も、足も、がたがたと無様に震えていた。
「俺って、こんなに弱かったか?」
 ぽつりと呟き、少年は忌々しげに額に手の平を押し付ける。恐怖を震えを封印し、追い払おうとしているかのように。
 少年は震えていた。
 初めて実感として感じた、死と消滅の予感に。
 そう。震えて、いた。



そして時が凍る夜<少女そして少年>



 少女が外に出て喉を潤し、満天に輝く星空につられて外に足を向けたとき、震える体をむち打って、少年は星空を眺めようと扉を開けていた。
 二人がばったりと出くわしたのは、単なる偶然なのだが、当人同士にしてみれば、こんな夜半に出会ったことは一つの運命のように感じられたかもしれない。
 証拠に、少女にしても、少年にしてみても、ここで二人出会ったことが、明日の行方を、未来の帰趨を暗示しているような錯覚を覚えたのだから。
 少女は、眼帯が外され露わになっている少年の両眼をじっと見つめ、少年は頭一つ分は確実に背の低い少女を、まるで睨むように見つめている。
 どれほどの時をそのまま過ごしたのか。不意に吹き込んできた風の音に、二人はまばたきさえ止めていた濃度の濃い時間から意識を取り戻した。と同時に見つめあっていた事実に気付いて、頬を朱に染める。
「わ、若! 眠れなかったのっ?」
 慌てたような少女の言葉は、ひどく取ってつけたような違和感を醸し出していたが、それを少年は指摘しなかった。逆に少女と同じくらいわざとらしい動作で、何事もなかったように軽く手を振ってみせる。
「あ、ああ。まあな。マルーこそ、どうしたんだよ。こんな時間に」
「うん。ちょっと、喉が乾いちゃって」
「そっか」
 少女は小さく答えた少年の前で、戯けたように舌をちらりと出して笑って見せる。けれど表情には、色濃く困惑が宿っていた。
 そんな少女を見つめる少年も、困惑していた。
 星に生きる存在全てをかけた決戦は、明日。
 そんな審判を前にした夜は、心がひどく脆くなる。
 全てが消滅する日への予感は、人が本来生きていく上で、心に纏っている虚勢や偽りという鎧の全てを排除してしまう力を持っている気がした。隠していた真実を、心を、打ち明けてしまうような気さえする。
 それを少女は本能的に察して、わざとこの時を回避しようとした。それは少年にしても、同じである。
 けれど、だ。
 ここで逃げてしまってはいけないと思ったのも、また一つの心理であった。じゃあなと言って、何時もと同じように明日を迎え、怯えと震えをひた隠しにしたまま、決戦に赴く。それでいいのか、とも。
 本当に、それでいいのだろうか?
 はっきりと心の中で自問して、少年は眉をひそめた。
 そんな戸惑いを少年に見付けて、少女も息を呑んだ。
 息も詰まるような沈黙。
 どくん、どくんという互いの心音まで聞こえてきそうな、密やかな、静寂。
「……若…」
 ふいに沈黙を破って、少女が手を伸ばした。
 少女は少年の事が好きだった。
 けれど恋愛感情ではないと否定してきた。少女は自分の中に芽生えた感情は恋以外の何者でもないと知りながら、それを否定した。認めてしまえば、今までの優しい関係の全てが壊れてしまいそうで、怖くて、出来なかった。
 それは少年も同じ。
 二人の関係を指す言葉は沢山ある。
 従兄妹同士。アヴェとニサンに残された最後の希望である立場を理解する、唯一の同士、など。
 今までの優しく穏やかな関係が壊れてしまうことは、少年にとっても怖かったのだ。だからこそ変化の時が訪れるのを拒否し、時の移ろいと共に変わる向けられた視線の意味も、少女に目を奪われている自分自身の感情をも、拒否し続けてきたのだ。
 変革の時は、二人にとっては怖いことだった。
 優しい温もりが奪われてしまう気がしたから…。
「マルー」
「若…」
 身体中の勇気を振り絞って名を呼んで、二人は再び沈黙した。けれど、どうしても途中で恐くなって、どちらともなく同時に、そらさずにいた視線を外してしまう。
 再び沈黙。能弁なそれではなく、気まずい静寂。
 気まずすぎて、折角の勇気が、しぼんでいく。
 少女はころころと笑いながら、そんな事を思う。
「や、やだなあ。若。そんなに真剣な顔して。ちょっと手を伸ばしただけじゃないか」
 明るい口調で言って、少女は絶妙なタイミングで嘘をついた。見詰め合った視線に含まれていた感情、手を差し伸べた事に含んだ告白。それらをもう一度真綿にくるみ直して隠して、穏やかで怠惰な関係の取り戻しを臆病な少女がはかる。
 もう一度何か言ってしまえば、全て冗談ですます事が出来ると思った。この戦いが終わったら、若の側にずっといたいと、昼間かなりの勇気を出していった言葉でさえ冗談に出来た時のように。
 大丈夫、まだ、穏やかな関係は壊れていない。
 そう思って言葉を募ろうとした少女の口を、いきなり少年の手が塞いだ。少女が驚いて目を見開く。
「しゃべるな、マルー。それ以上言うな。頼むから」
 喋らせてしまったら、従妹は優しい嘘をつく。事実今まで、何度も優しい嘘をつかせてきた自覚は少年にはあった。
 ギアで戦う時も、両親の敵を前にした時でも、こんなに緊張したことはなかった。とは、全てが終わった後の少年の回想だ。
「……俺は、この戦いが終わったら、マルーの所に還ってくる。従妹としてじゃなくって、そうじゃなくって、俺はマルーの元に還ってくるよ」
 途中で言葉をつっかえながら、はっきりとした告白ではない、少女ならば分かってくれるだろうという甘えの入った言葉を継げて、少年はそっと手を離す。
「……若? それって…もしかして…? 」
 少女は言葉をきちんと理解した。
 けれどもう一度聞いてみたくて、分かっているのに嬉しいのに、信じられないように首を振る。そんな少女の頭を軽く小突いて、少年は真っ赤になりながら笑った。
「ばっか。分かるだろー? マルー。俺にとっての片翼は、お前しかいねーの! もうずっと前から、そんなん、思ってたんだよ!」
 まるで怒っているように喋ると、少年は右手を腰にあてて、ふんっと天を仰いだ。それを見つめていた少女が、いきなり感極まって涙をこぼす。
「お、おい! マルー!?」
 大仰に焦った少年を、泣き笑いで少女は見上げた。
「だって、だって、若、ボク、嬉しくって…だから」
「だからって、泣くこたあねえだろ!」
 さらに焦る少年に、少女はえへ、と笑ってみせた。
 もしかしたら、この時初めて、二人は互いをきちんと認めることが出来たのかもしれなかった。自分にとって相手が、「マルグレーテ」というたった一人の少女と、「バルトロメイ」という唯一の少年であると。
 マルーはごしごしと色気のない仕草で涙を拭い、少年…バルトの腕に思いっきりしがみつく。
「……若、ボク…夢を、見たよ」
 息を止めるほどに恐ろしかった、夢。
 最後にみえた、鮮やかすぎる映像。
 話さないでおこうと思った。口にしてしまえば、不安が胸から離れなくなるから。見なかったのだと、自分を騙そうとおもっていた。
 見た時は不安を無条件に見せて良い相手はいなかった。けれど、今はいる。目の前にいてくれる。
 マルーは絡ませた腕から伝わってくる肌の温もりをしっかりと守るようにして、言葉を続けた。
「みんなが死んで行くんだ。痛みもなく、苦しみもなく、全てが静かな消滅を迎えて。そんな中に、ボクも行こうとすると、声が聞こえて」
 覚醒寸前に見た、映像。
 ゾハルとの戦いに破れ、自分の手の届かない遠い場所で転がされた、死体の山。朽ちるギア、飛び散った肉片と、黒ずんだ血液と汚泥に埋もれ、最後の希望を打ち砕き、世界を滅する存在と化した「ゾハル」を。
「若が、ボクの知らない所で死んでた。見えるのに、手を伸ばしても若に触れる事も出来ない。恐くて、悲鳴もあげられなくて、息も出来なくって。飛び起きて、実際に呼吸を止めてた自分にも気づいた。だからこそ逆に、夢だったって気づけたけど、でもね、若」
 本当に、恐いのはなんだろう?
 世界が滅びる事? 全員が死ぬ事? 消滅する事?
 マルーはそこまで考えて、大きく首を振った。やっとのことで心が通じ合った大切な人、その人に嘘をついたまま戦場に向かって欲しくなかった。
 例え、恐怖を話す事が、己のエゴを晒すことになったとしても。今は知っていほしい。自分の恐怖を。
「ボクは、世界が滅ぶ事なんて、恐くない」
 言葉を絞り出して、顔を、上げる。
 今はバルトの瞳だけを見ていたかった。その瞳に映る自分だけが、今、信じてよいものに思える。
「恐いのは、若が死んじゃったら? って事なんだよ。世界が救われても、若がいなくなったら、意味なんてない! だったら世界ごと滅んでくれた方がいい! 負けちゃえば、みんな死ぬから。若にボクが置いていかれてしまうこと、ないから!」
 堪え続けた不安が、弾けてしまう。
 若が死んだら? 自分だけ生き残ったら?
 自分は助かった世界を恨んでしまうだろう。還ってきた残りの人々を罵倒さえするだろう。
 けれど、それが事実だ。決戦を前にして、恐いのはただそれだけだった。死ぬことではない、人類が滅ぶことではない。バルトが、大切な人を失ってしまうかもしれないという事実が恐い。
「本当はアヴェもニサンもしらない! 世界が滅びるかわりに、若が生きていてくれるなら、ボクは世界の崩壊をも望むよ!? だって、だってそうだ。若の声が聞こえない、体温が感じられない、その瞳がボクを見てくれない。そんな世界に、どんな価値があるっていうの!?」
 まるで、それが約束された未来のように、恐慌に陥りかけたマルーには感じられてしまった。
 見える気すらした。まるで未来を予知するように。
 歓びと言う名の有彩色に彩られた世界の中、自分だけが哀しみの無彩色の中にいる。全ての人が喜んでいて、泣いている者など一人もいない。けれど、自分は一人泣いているのだ。腕に抱きしめた骸の重み、固く閉ざされた瞼の意味、一人死んでいったバルトを、泣いて呼ぶしか出来ない――そんな世界が。
「マルー!」
 不意に名前を呼ばれ、はっとマルーは顔を上げた。
 と同時に、温もりが身体全体に広がる。
 守るように、なだめるように、自分にだけ与えられた暖かさ。それをやけにリアルに感じとってから、マルーは理解した。バルトが自分を抱きしめてくれたのだと。
「若?」
「俺だって恐い。負けたら、マルーを守れない。俺の見えないところで、死ぬなんて嫌だ。俺だけが死んで、マルーを残して、泣かしたくねぇよ」
「……うん」
「絶対に還ってくる。って言ったって、不安だよな。よし。分かった」
 ぎこちなく抱きしめたマルーの身体を少し名残惜しげに離し、顔を見つめて、悪戯っぽくバルトは笑う。
「俺が先に死んだら、マルーに取り憑いてやる」
「え?」
 告白をはたしたばかりの甘い会話など、どうもこの二人に求めるのは無駄のようだった。バルトは至って真面目な顔でこれを言う。
 普通恋人に、取り憑いてやる、と言うだろうか?
「だから、お前に取り憑いて、俺の事なんて忘れられるようになるまで側にいてやるって」
「若…」
「んだよ。どーせ、あきれてんだろ。ちえ」
 ぷいとそっぽを向いて子供のようにむくれるバルトを見ながら、マルーは首を振った。
「あきれてないよ。でも、若。それちょっと違う。忘れることなんて出来ないんだよ、ボク。どうせだったらさ、サービスして憑り殺してくれる、くらい言えないのかなあ?」
「……う。俺がマルーを殺すのか?」
「嫌だったら、他人を蹴落としてでも生還する! 死んだら、誠心誠意をこめて、ボクを憑り殺す! ね」
「マルー。その、誠心誠意を込めて憑り殺すって、なんか変じゃねえ?」
「ちょっと、変かも」
 ぽつりと答えて、二人はおかしくて笑った。
 天に星空が輝いている。まばゆいような光は、明日、地上全ての生物の命が掛かた戦いが待っているとは、とても思えない。
「恐いね。若。ずっと、時が凍ってこの夜が続けばいいのに」
 ぽつりと呟いたマルーを、バルトはまた抱きしめた。
 まるで互いの温もりだけが、恐怖を払う術はないと信じているかのように。
「恐いさ」と小さくバルトは呟き、マルーと同じように満天の星空を見上げてみせる。
「本当に、時が凍っちまえばいいのになぁ」
 そしてらしくもない事をバルトまでが言って、彼はばつが悪そうに頭をかく。それから二人見つめ合ってくすくす笑った。
 時が凍る術など、ないことは分かっていた。
 分かっているから、恐かった。離したく相手がいるから、ただずっとこうやって、抱きしめあっていたかった。
 
 
 決戦前夜。
 誰もがおそらく眠れぬ夜を過ごすとき。
 夜が凍ればいいと、願う、そんな夜。

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