[最終話 閉鎖領域]

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閉鎖領域 No.04


 立ち去るつもりだと思ったので、久樹は止めるために静夜の手を取る。
「さっきのことなんだけど」
「なに?」
「学園に入ろうとした俺の首を絞める勢いで襟首引っ張ったのって、静夜だったんだよな?」
「そうだよ」
「あっさり終わらせるなって。出来れば、なんで止めたのか教えてくれないか?」
「質問に質問を返すけど、入ろうと思ったのはなんで? さっきも言ったけど、あそこは久樹さんたちを排除した場所だよね?」
「幸恵から電話があったんだよ」
「立花──幸恵さんがなんて?」
「邪気が起こしたみたいな現象が発生してるって言ってたよ。もっと詳しく聞こうとしたんだけど、電話が切れてあとはもう駄目だ。何度かけても繋がらない」
 やるせないと肩を落とし、久樹は携帯電話を取り出して見せる。それで今更だが、あれだけかかってきた呪詛じみた電話も、ぴたりと止まったことに気づいた。
「いまの白鳳学園からの連絡が入った。そっか、やっぱり久樹さんたちも絆で向こうと繋がってるんだ」
 ごちたあと、静夜は名前の通り静かに久樹と爽子を見やった。
「ここに来ようって思った理由は分かった。それでもさ、無関心の次には関心が来て、無防備のあとには突撃がくるの? 久樹さんも爽子さんも、やることが極端すぎてちょっとついていけないな」
 らしいといえばらしいけど、とまとめて久樹の肩に手を置く。
「とにかく、そこから中に入るのはやめたほうがいい。電話くれた幸恵さんのところには、たどり着けないはずだから」
「たどり着けないわけないだろ? だって白鳳学園のなかにいるんだから」
 久樹は校門の奥を指さした。
「そうだね、白鳳学園に閉じ込められてる。……久樹さんと爽子さんは、僕が風鳳館に閉じ込められた秋のことを覚えている?」
「風鳳館であって、風鳳館ではない場所に閉じ込められた……あ!」
「思い至ったみたいで良かった。多分アレと似たことが起きていると思うんだ。いや、もっと性質が悪そう」
 とにかく、と強めに言葉を終わらせて、静夜は「案内するから、来てよ」と言った。


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竹原湊 湖底廃園
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