[最終話 閉鎖領域]

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ヒトと贄 No.03


「そうだよ、ちゃんと伝えておけばよかった。ここまで」
 無視してきたようなものだよな、と続く言葉を飲み込み久樹を見守る。
 久樹は丁度、そおっと鏡に手を伸ばすところだった。
 白梅館に光の柱は現れなかったが、それでもあちらの世界が見えるかもしれない。その期待でいっぱいのまま、硬質な鏡に触れて。
 掴まれた。
 鏡から出てきた手に、掴まれてしまった。
「ぎゃあ!」
「久樹!? 鏡の、お、おば、おばけ!?」
『……ひどい』
 なまめかしくも艶やかな、けれどしょんぼりとした声が全員の脳裡に響いた。
「へ?」 
 久樹はようやく我に返り、爪を立ててくる勢いをなくして、するすると鏡の中に戻っていく手を慌てて掴んで逆にひっぱる。
 ふわりと空気が流れて、緋色の肌襦袢をまとう娘が現れた。
「あ、やっぱり! さっき助けてくれた……名前思い出した、舞姫さん!」
 雄夜の妄想で忙しかった梓が、突然に現実に戻り嬉しそうな声を上げる。
「──え、さっきの大袈裟な声って、名前が思い出せなかっただけなのか?」
「うん」
 襟足でぶっつりと切った特徴的な髪を揺らせて、梓は笑顔で頷く。
「力が足りないって消えてしまったから、心配していたの。さっきは力を貸してくれてありがとう、舞姫さんがいなかったら織田さんたちを連れ出せなかったから」
 礼を言う高校生たちの前で、舞姫はしょんぼりとうつむいたまま首を横に振る。
『力を使いすぎてしまっただけですもの。すぐに力を分けて下さると思っておりましたのに……』
「あー、舞姫? ごめん。いろいろあっては言い訳だな、とにかくごめん。それから力が足りないって大丈夫か? こっちで存在出来るんだな」
『わたくしたちはそもそも異端ですし、この空間に存在してるわけでもありません。こちらでは形がなければ力なきものになるだけ』
「どうやったら力が戻る? 舞姫がこっちに居てくれて、すごい嬉しいんだ。消えないでくれ」
『ほんとう? 貴方さまは、わたくしを求めてくださいますか?』
 妙に色気のある言葉選びに、爽子が微妙な表情になった。
「ど、どうどう」
「秋山さん、それ、慰めているの?」
「はい!」
 満面の笑顔を向けられて、爽子はため息を落とした。
 そうしている間にも、舞姫は久樹の手を取り己の頬に持って行ってうっとりとする。過剰な接触だが、久樹の炎が舞姫に注がれていると分かるので、爽子は深呼吸を繰り返しながら我慢した。
「なあ舞姫、起きていることで分かることはあるのか?」
『漣とこちらでの情報を共有しております。ですので、少しは』
「漣?」
 突然出てきた名前に驚く高校生たちに、夏の時の邪気だった事と今は味方であることなどを爽子が説明する。
「舞姫でも力が足りないなら、あいつはもっとピンチなんじゃないのか?」
『ええ、漣に形を与えるのは水の力ですから。使い手は失われ、形すら保てませぬ。それでも』
 舞姫は智帆の携帯電話に視線をやり、それから高校生たちに声を向けた。
『お三方の力はたしかにそこに。けれどあちらへの門を開けるには三つに分かれねばなりません。漣の守る姉妹が大地と光の寄る辺になったように。水を、風を、異形を使う力の寄る辺があれば、漣もまたご助力出来るようになりましょう』
 与えられた炎を愛しげに抱きしめてから、舞扇を久樹の手にある携帯電話にかざす。
『覚悟がおありなら、わたくしが力をお貸しします』
 はい!と勢いよく梓を手を上げた。
「雄夜くんのこと全部好きだもの! 式神もどんと来いよ! それに私も、雄夜くんが消えたときのこと見届けたいよ」
 消失の光景は切ないけれど、優しさに満ちたものでもあるはず。
「智帆たちが戻って来れるならなんだって。それであいつに言ってやるんだ、俺のおかげで戻って来れた気持ちはどうだーって」
「静夜くんたちを失ったままなんて嫌なんです」
 きらきらと目を輝かせる三人に、舞姫はそっと目を細めた。
『──先に一つだけ』
「なんでも言ってください」
『ご期待されていることの一つは起きぬかと』
「え?」
『これらの仕掛けは風と水の使い手によるもの。消失の記録などを開示する方々とは思えませぬもの』
「「「たしかに……」」」
 肩透かしにあった高校生たちの前で、緋色の娘は舞扇でふわりと丸を描いた。あわせて桜の花びらがこぼれだし、淡い雪のように舞い始める。
 ひらりひらりと降りてくる儚い花は、体に触れると吸い込まれるように消えていった。まるで淡雪のようだ。
「綺麗……」
 夢幻の光景に、手のひらで花びらを受け止めた爽子が目を細める。
『御覧になられるだけですの?』
 突然に問われて、爽子は「え?」と言葉を詰まらせた。
『わたくしのあの方には、貴女が必要ですのに。ご一緒しては下さいませぬの?』
 悲しげな問いかけに答えたいが、まだなにを問われたのかが分からずに首を傾げる。もどかしくも切なげに邪気であった娘は眉を寄せた。
 それで爽子はあることに気づいた。
 邪気として生まれ、炎により浄化と再生を果たして久樹を全身全霊で慕い、存在にかけても彼と彼が大切に思う者は守ると告げた彼女だというのに。
 久樹や自分たちを名前で呼ぼうとしない。
 形をもたない存在にとって、名前は個を与え存在を示す特別なものだ。菊乃に名付けられて、存在を確かなものにした漣がそれを証明している。
 そんな彼女が自分たちの名を呼ばないのは、異常事態が終われば姿を消すべきだと勝手に決めているのだと分かった。きっと心残りを減らすための線引きだ、そう思って爽子は腹を立てた。
 久樹との関係が壊れることを勝手に恐れて、冬の事件の発端を作った自分自身の思い込みの再現を見ているようで。
「もちろん一緒にやるから、わたしのお願いを聞いて」
 手のひらで消える儚いものを握りつぶし、真っすぐに娘を見つめる。
「わたしたちの名前を呼んで。舞姫のことは一緒に頑張ってくれている仲間だと思っているの。勝手に距離を取って、貴方とかで名をごまかさないで!」
『……わたくし、そんなことをしてしまったら。離れられなくなってしまいます。ずっとお側にと願ってしまいます』
 困りますと首を振る緋色の娘に、首を傾げたのは久樹だ。
「それなら俺と爽子の側に居たらいいだけだろ。炎で構成されているんだから、俺の近くなら一石二鳥だろうし」
『そのようなことをおっしゃって、わたくしや漣のような存在にずっと付きまとわれても、良い事なんてなにも……』
「良いことがあるから友達でいるんじゃないぞ。それだけなら弘毅なんてどうするんだよ、あいつ俺を振り回す天才だぞ。そういやへこんでるのか連絡ないな。とにかく舞姫。そういや姫ってつけるのも他人行儀か。な、舞」
『──後悔なされても知りませぬから。では織田さまの』
「さまもなし。あと下の名前を希望するぞ」
「それって!」
 いきなり目を梓が輝かせる。
「下の名前で呼ぼう普及活動に織田さん参加ですね、歓迎します! というわけで舞さん、私は梓、あと桜に亮くん!」
「決まったな。爽子の事も名前で呼べって。いいだろ爽子?」
「もちろん。これで決まりよ舞。ここにいる全員のだからね」
『……皆さまいじわるです。では、その、久樹さんと爽子さんの』
 名を口にした瞬間、まとう緋色にまけぬほど、白蛇のような頬を舞が上気させた。
 一気に集まってしまった視線と、舞ちゃん可愛い!と上がる声に身体をふるわせ、扇で顔を隠してからバッと閉じた。
『これよりお二方の異能力を頂きます! それをもって、携帯電話に封じられた力を解放いたしますから覚悟なさいませ!』
 舞の瞳が紅く燃えて、舞う花びらが放つ光が強くなる。
 久樹と爽子は身体にかかってきた圧力に眉を寄せ、高校生たちは花びらの光が智帆の携帯電話に降り注ぐのを見つめる。
 携帯電話から青と、翠と、金を宿す光が浮かび上がってきた。
 ──彼らに声をかけられたと思った。
 とてもごく普通の、朝に「おはよう」と声をかけられた、そんな感じだった。だから失っていることも忘れて挨拶を返しかけてしまう。
 浮かび上がった光は舞う花びらに吸い込まれ、魅入っている高校生たちへと降り注ぎ始める。
「すごい綺麗ね……」
「まるで光の雨だな」  
「あっちで見た、静夜くんの目にあった青の色」
 それぞれの感想がこぼれるものの、特になにも起きはしなかった。戸惑いながら高校生たちは互いを見やって、全員で息をのむ。
「……秋山っ! 目が金色になってるぞ!? 雄夜って金になるのか、なんかもう凄いな金色」
 仰天しきりの亮に舞が朱の隈取りの引かれた瞳を細める。
『わたくしのことはお認めになるのに、目の色が金だと動揺なさいますの? 亮さんは難しいお方ですのね』
 舞の指摘に「いやだって」と亮は慌てた。梓はむくれた顔になる。
「亮くんだって、超絶な和顔なのに目はエメラルドグリーンになっているんだから! 似合わないはお互いさまでしょ……うひゃあ、これは確かにすごすぎるかも!!」
 舞が逃げ込んでいた鏡を振り返り、金目の自分を確認して梓は仰天した。
「あ、でも、雄夜くんなら絶対にかっこいい! うん、素敵!」
 仰天からの歓声の切り替えの早さに亮は脱力する。
「すげぇな、秋山。その切り替え能力。ところで北条、目を固く閉じすぎだろ」
「だって自分を見るのが怖くて」
「静夜のだから青だろ? 輝きを放ってるあたりは凄いけど、色的には普通だろ」
「だって……私、静夜くんのことを同性の友達って思ったことないし、むしろカッコイイって思ってるけど。でもね、現実ね、紅茶色の髪とか陶器みたいな肌とか、すごく顔立ちは可愛かったりとか、とにかく青に輝く目でも似合ってしまうの、でも私だよ……!?」
 頼れる委員長の取り乱す姿に、どう返せばいいのか分からずに亮は固まる。梓は軽やかに笑った。
「三つ編みをほどいてふわふわにしたら、青い目もぴったりになるよ桜。開き直りって大事だよ、だって眼鏡は空気読めないから、色がついたりはしないしね」
「分かってる、分かってるよ。大丈夫よ梓。似合わなくても静夜くんはわたしを笑ったりしないもの! 宇都宮は笑うだろうけど」
「なんで俺に八つ当たりするんだよ!? 俺なんてな、智帆に見られたら指さして笑われるぞ絶対。顔がいい奴らはどんな目の色になっても似あうからいいよなーちくしょー」
 目の色でどこまでも盛り上がる三人に、置いてけぼりをくらった久樹と爽子は顔を見合わせる。
「似合う似合わないで考えたことないぞ。爽子、俺の目が赤くなるのってどうだった?」
「いつもと同じだよ?」
「そっか、別に変わんないのか、そうなのか」
『そろそろに致しませぬと、立花姉妹が先についてしまわれますよ』
 なかなか騒ぎが収まらない上に、久樹と爽子まで呆けているので、仕方なく舞が声をかけてくる。
「ごめんなさい!」
 慌てて気持ちを切り替えた桜が謝罪し、すぐ外に出ようとして足を止めた。
「どうしたの、桜さん?」
 爽子が問えば、少し考えこんでから、視線を舞に向ける。
「変化したこの目の色って、他の人たちにも見えますか?」
『ご心配はいりませぬ、他の方には見えませぬから』
「だったら、舞さんのことは?」
『わたくし? 名を呼ばれ、名を呼ぶことまで許されましたから。一般の方にも認識されましょう』
「なにか問題でもあるの?」
 考え込みだした桜に爽子は尋ねた。
「いえ、舞さんは肌襦袢だけで、下着で出歩いているようなものなんです。しかも舞さんをあっちで目撃した人も多くいると思うので、気づかれたら変な騒動になるんじゃないかって思って」
「あー、それもそうだね。だったら着替えたらいいよ!」
 梓のあっさりとした提案に、全員がぽかんとする。
「着替え……られるのか?」
『わたくしはこれで形を得ましたので。そうですね、強くこの衣服でと念じれば可能かもしれません。ただ洋服にはあまり詳しくありませんの』
「だったら私たちが着ている制服はどう? 舞ちゃんは同い年くらいに見えるし、目立たなくなるしでぴったりだよ!」
『ではそれにいたしましょうか』
 舞扇を持ち上げて、舞妓のようにくるりと回転した。
 花びらが再びひらひらとこぼれ、それを身にまとわせた後、舞は高等部の制服姿になっていた。
「舞ちゃん似合うよ! 可愛い、うちのクラスに紛れて座ってても、きっとばれないよ」
「流石にばれるだろ」
「可愛い子なら増えても問題ないと思うの」
 そんなことを言いあいながら、高校生たちは白梅館を飛び出していく。
「なんというか、適応能力が高いよな。智帆たちの友達って」
『久樹さん、わたくし、制服が似合っておりますか?』
 距離をいきなり詰めて、舞が尋ねる。
「そ、そのいきなりアップになる癖はやめてくれ、舞」
『左様でございますか……』
 しおしおと緋色の娘はうなだれた。
「あと似合ってる。あーなんか見たくなったな、爽子が着てるとこも。なあ家にしまってあるんなら」
「やめて久樹、卒業してからの制服はハードルが高すぎるから!」
「そこの大学生! 早くこないと置いていくぞー!」
 外から亮の声がかかって、慌てて走り出した。
「言っとくけど、舞も足で走るんだぞ! 間違っても空中移動とかするなよ!」
『……かしこまりました』
「無念そうな顔をするんじゃない!」
 人の姿を取ってはいるが、邪気だっただけあって、いろいろと舞はズレている。それでも居てくれるのが久樹にとっては嬉しくもあり、頼もしくもあって、気持ちが上向きになってきた。
 幸恵が見た巧は、まるで生贄にされているようだったという。
 白鳳館で菊乃が見つけるだろう将斗も、同じ状況に陥っているのだろうか?
「生贄になんて、絶対にさせないからな」
 ひどく不気味な言葉から連想する未来に、久樹は表情を厳しくした。
 正門を抜けて真っ直ぐに進むと、初等部から大学部まである学園の共有施設がある。この白鳳館は普段は静かなのだが、今は教職員がひっきりなしに出たり入ったりしていた。
「あんなことが起きた後だから慌ただしいのは仕方ないけど、人がきれてくれなくて困るね」
 風鳳館で久樹と爽子が助けてくれてありがとう!の熱狂に取り囲まれた記憶は新しいので、偵察に先行した高校生たちが顔を曇らせる。
「どうしよう桜。これじゃあ久樹さんたち通れないよ。そうだ変装して貰う?」
「変装ってどうするつもりなの?」
「そりゃあ北条、定番なら帽子にサングラスだろ。どっちも今は持ってないけどな」
「……あったとしても変だよそれ。本当にどうしよう、相談したら舞さんがまた強行突破を試みそうだし」
 ご助力しましょうか?と言って、季節外れの桜を舞わせて集まった人をプチパニックに落として散らせた再現は遠慮したい。
 陽動作戦とか?と思ったところで、ぽんっと肩を叩かれて桜は「きゃ!」と声を上げた。
「相棒、今のは可憐な少女っぽかったな! で、なんで悲鳴を?」
「そういう言い方って、失礼だと思いますよ」
「失礼って……へ?」
 桜でも梓のでもない、けれど高い女性の声に亮が目を丸くする。
 三人で顔を見合わせて、恐る恐る振り返って「わ!」と声をそろえた。
 学生課の本田里奈と、大学部の丹羽教授が立っていたのだ。
「あ、あああ、あの、その私たちは!」
 取り繕わなければと思う気持ちが焦りになって、さすがの名物クラスの委員長も言葉に詰まる。 
「そこまで驚く必要はないだろうに。騒ぎを起こさずに中に入りたいのだろう、夜間通用門のカードキーを持ちだしてきた。よってすぐに出てきたまえ、織田君、斎藤君」
 丹羽教授が面倒そうに呼びかける。
 桜たちに負けず劣らずに身体を震わせて、久樹と爽子は舞と共に恐る恐る物陰から出てきた。
「……その、どうして分かったんですか丹羽教授」
「簡単な話だ。統括保健室で立花くんが途方にくれていたからな」
「先についちゃったんだ。ごめんなさい幸恵、悪戯に心配かけちゃった」
 ここで謝っても意味はないのだが、色々と盛り上がって遅れた自覚があるので胸が痛い。
「不慮の事態が発生したのではなく、君たちが道草を食っていただけか。まあ良かろう」
 冷たく聞こえる丹羽教授の声に、久樹と爽子は揃って項垂れた。
「教授は責めているわけじゃないのよ。立花さんと同じように、心配をしているだけ。それよりもまずはお礼を言わせて、助けてくれてありがとう」
 里奈が頭を下げた。
「えっと?」
 いきなりの事にきょとんとする。
 特に久樹と爽子以外は、春の事件について里奈と深く情報共有をしたことがないので、さらに不思議そうな顔をしていた。
「私って春の事件の当事者なの。織田くんたちに助けてもらったのよ」
 伸びた髪を風に揺らせて、里奈は久樹の傍らにいる舞を見やった。
「本当にごめんね、舞姫。私のせいで終わらない物語に閉じ込めてしまって。私が作り出したのに、自信がなくて否定してしまった。ちゃんと完成していたのに」
『わたくしは……』
 どうすれば良いかわからず、舞は久樹の服の裾をぎゅっとつかむ。
「許してって言ってるわけじゃないの。今の舞姫は私が書いたキャラクターではなくて、ちゃんと別の個性をもった女の子だもの。けじめを付けたかったのに付き合わせてごめん、それから」
 足を止めて待っている丹羽教授の背を見やり「あっちでも私たちを助けてくれてありがとう」と重ねた。
「本田さん気づいてたんですね。正門に私たちがいたって」
「桜の花が異変を鎮めてくれるなんて、春の時の逆だから驚いて。駈け去っていく斎藤さん達が見えたら、助けてくれたって分かった、舞姫も居てくれて」
 助けられてばかりと続ける里奈に、桜が「あの」と声を挟む。
「はい?」
「秋の時にうちのクラスにいらっしゃったのって、心配でだったんですか? 酷い態度をとってしまってすみませんでした」
 謝られた里奈は慌てて手を左右に振る。
「あの頃は知りたいって気持ちばかりだったのの。警戒をされるのが当たり前だった、むしろごめんなさい」 
 謝罪合戦に「不毛に陥ってんぞ」と亮がつっこむ。
「……その、今は私たちと一緒ですね。信じて心配をしている」
「結局のところ助けられる専門で、心配しか出来ることがなくて」


 
 
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