血で血を洗う動乱の時代
深い森の濃い闇の中で


茜の髪に空色の目をした生贄の少女と
藍色の目をした少年がめぐりあった


少年は少女に手を差し伸べ
少女は少年の手を取る


二人は風の声に耳を傾けながら、歩き出す
風の啼く谷を目指して


風の待ち呼び人 [完結]

「ファルはどうしてあんなところで、縛られたまま転がされていたの?」
「ごめんなさい。あたし、こんな山の深くまできたことなくて。怖くて」
「もう遅いからさ、今日はここで夜をあかすけど、朝になったら行こう」
「風を強く感じる者の額に、文様は浮かぶ。けれどね、意味と役目を持つ文様は……」
「おれは行くよ、ファルと二人で最後まで一緒に!」
「やれやれ。お前らの反応みてるとな、まるでおれが悪者だなぁ」
「あたしも守りたいな、セナイのこと」
「あたしも、ずっと一人で寝てなくちゃいけなかったら、一緒にって思うかも」
「おれはさ、風を感じることが出来たから。風が大好きだったから!!」
「セナイの中に流れる風の民の血が叫ぶんだよ!」
「蛇足です」


Copyright Minato Takehara Written by Japanese only.


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